終わる世界に残る澱。

それを愛とか情とかいうには、私たちは幼すぎた。
お互いさえあればいいと思ってしまったのは、世界が狭すぎた故だろう。
小さな小さな箱庭で一緒にいられればそれでよかった。

私は君で、君は私で。
手をつなげば二人の心は重なり、全ては二人のものだった。
傲慢な小宇宙は広がることを拒み、底なしのブラックホールのようだった。

世界を手に入れたのだと!

この世界は何者をも拒絶する!

私と君だけだ君と私だけだ!

歪みは不可視の崩壊となって降りかかってくるとも知らずに。
それでも私と君は多分、幸せだったのだろう。
大人の思惑で完膚なきまでに打ち壊された世界に放り出されたとしても。
何も知らず無知で無垢で無慈悲な私と君は、二人ではなくなってしまったけれど。

それでも君は私に手を振ってくれた。
楽しかったよ、と真っすぐに私を見て。

なくしてしまった世界は終わり、無意味な日々が始まるのだとしても。
私は、君といたあの世界を決して忘れることはないだろう。

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