そんな紙一重

お疲れさまと縋る手がむしょうに気持ちが悪かった
お前が求めているのは私じゃないだろ
いつまで私を身代わりにすれば気が済むの
聞いたこともない猫なで声で私を呼び
慣れない手つきで私を抱く
帰って来てくれると信じていた、なんて大嘘をつき
お前がいないとダメなんだよ、とわけのわからないことを呟く
うんざりする私などお構いなしに
きらきらこぼれる偽りの言葉たち
すり抜けて落ちて踏まれて見る影もない
お前の求めるものは解っているよ
私が私ではなく私らしくなく私としてではなく私を殺して
私ではない私がお前を抱けば満足なんだろう
お疲れさまお疲れさまお疲れさま
何度も言われて縋ってきて
どうか逃げないで捨てないで傍にいて一人にしないでいかないで
背筋を這い上がる嫌悪が私を蝕んでは
快感に変える

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