終古 紲

それは未遂というもの

 思わず携帯電話を投げ捨てそうになり、桐子は慌てて思いなおした。 いや、投げつけたら壊れるでしょ確実に。一人ごちてため息をつく。「はろ、桐子姫」「ん~」 誰もいなくなった放課後の教室。椅子に座りぺたりと机に突っ伏した桐子は、その覚えのある声…

雨が降ったら

「依沙(いさ)にとってさ、雨ってなに?」「――はぁ?」 俺昨日ケータイの機種変したんだけど、どう? とか言っていた宰蔵(さいぞう)が突然切り出した話についていくことができず、依沙は思い切り顔をしかめた。何故にこいつはこう脈絡のない話し方をす…

夢であってと、願う。

 抱えた腕の痛みが、いやにリアルで。かすれた息が近すぎて。細めた目が、やわらかに見つめていた。「……」 名前を、呼ばれた。震える腕がのびてきて、頬に触れた。そこで彼は、自分が涙を流していることを、知った。「男が、涙見せる…

加糖ミルクティ

 雑誌の立ち読みは、お断り。「……何の用?」「オカイモノですヨ」 三十分近くも読んでた雑誌をやっとラックに置いたと思ったら、缶コーヒー(ホット)を恭しく差し出しやがった彼は、悪ぶれることなく無邪気にそう言った。&emsp…