短編・掌編

混沌×人生

 このもどかしさを伝える術がないことこそがもどかしい。何をしてもうまくいかない、というかありきたりの言葉しか浮かんでこないことに苛立つ。 枯渇したそれこそ才能なんていうものがあったのならば、また違った未来があったのだろうかなどと夢想する。 …

堂々巡りの現実

 一番落ち着く場所はトイレなんだと言ったらそうか、と頷かれた。 確実に一人になれる場所というとここしかないじゃない。そう力説したら、まあそうだよねぇ、と笑った。 便座に座ってカタログめくるのが至福なんだよ。換気…

左様なら

 私は、人形の髪の毛を切っていた。 ジャク、ジャク、ジャク、ジャク、ジャクジャク。 鋏を入れる度に、髪の毛はどんどん短くなる。 ジャク、ジャク、ジャク、ジャク、ジャクジャク。 長かった髪の毛…

刀護

 すらりと抜かれた刃に、彼女は目を細めた。 そんな彼女の反応は気にも留めず、刀護(かたなもり)は鞘を無造作に腰紐へ押し込み、刀を右手に握った。 とはいえ、構えるでもなく腕はだらりと下げたままだ。「……あー、った…