空虚

全消去

不協和音が鳴り響く世界で彼はほくそ笑む壊れてゆく人たち脆く崩れゆく人たち疑心暗鬼は心を蝕み痛みは更に暗く沈み込むそれでもと立ち上がる人たちを彼は足蹴にし谷へと突き落とす滅んでしまえこんな世界など消えてしまえ彼の叫びは世界を震撼させる慟哭のよ…

そして私は嘘となる

泥船の上で叫ぶ私を滑稽だと思うかい?沈みゆく汚泥の中でもがく私を愚かだと笑うかい?ちっぽけな世界で何も知らない私を可哀相だと嘆くかい?捨てる程の心もない私を虚しいと蔑むかい?死にたくないとみっともなく泣く私を意味がないと切り捨てるかい?いっ…

引き回しの孤独

完璧を是とする愚かしい前提は無駄という愚者の行為を嘲笑うひとつ話をしてやろうと囁いた無垢な感情など唾棄すべきだと零よりいでし残骸など虚しくてその身より零れ落ちる後悔の念心に巣くう虚無とて求めうるにただそれだけのことを信じるか知るべきものを知…

或る罪人の一幕

君が笑うたびに僕は思い知らされる君からあいつを奪ったのは僕なのだと何も知らぬ無垢な手は汚れた僕を浄化するかのようにのばされるあのね、と舌足らずのお喋りに応える僕は何者だろう小さな君は僕に絶対の信頼を置き、そして呼ぶ「おとーしゃん」握りしめた…

だから、存在しない。

そう、思い出して。私が私であった頃、あなたは間違いなくあなたでその腕の中はどんな世界よりも幸せだった。私が壊したあなたは、私だけを見て好きだよ好きだよとうわ言のように繰り返す。あなたが私を壊さないのは、あなたが私を憎んでいるから。壊れてゆく…