恋愛

それは恋か執着か

ちらちらこっちを見ながら笑うのはやめてほしい、と思うそういう類のものではなくて言ってしまったことは取り返しがつかなくてどうせまた頭かかえてもだえるしかないんだからいつだって君は高みの見物絶対に踏み込ませないくせに手はさしのべる隣に並ばせてく…

祈りは色づく音

あなたの奏でる色があふれだす満開の桜抜けるような青空風に舞う紅葉しんしんと積もる雪忘れないと私が言った忘れないとあなたが言った猫みたいにひっかき傷を残したかったあなたに消えない傷跡を残したかったあなたと見た風景あなたと過ごした日々灰色だった…

人喰らう紅

 暗さに沈んでいくのは心地が良い。 どす黒く染まった空が、やけにきれいに見えた。雲の切れ間もなく真っ暗な夜はどこまでもやさしく包んでくれるようで、サヨリはほっと息をつく。強張った体が弛緩する瞬間が一番危ないのだと言ったのは、ヤヒロだったか。…

それは未遂というもの

 思わず携帯電話を投げ捨てそうになり、桐子は慌てて思いなおした。 いや、投げつけたら壊れるでしょ確実に。一人ごちてため息をつく。「はろ、桐子姫」「ん~」 誰もいなくなった放課後の教室。椅子に座りぺたりと机に突っ伏した桐子は、その覚えのある声…

欠けた全てを捨てる日

感じるままにあれと君は言うけれどそれほどまで何かを感じることなどないのだとしたら僕は何か欠落したままあるのかもしれないあざとい女は陳腐だけれど心地が良くて本意を隠した女は気持ちが良いが冷たい凍えた心を抱きしめ走ったところでどうせ君にはたどり…

終わる世界に残る澱。

それを愛とか情とかいうには、私たちは幼すぎた。お互いさえあればいいと思ってしまったのは、世界が狭すぎた故だろう。小さな小さな箱庭で一緒にいられればそれでよかった。私は君で、君は私で。手をつなげば二人の心は重なり、全ては二人のものだった。傲慢…

そんな紙一重

お疲れさまと縋る手がむしょうに気持ちが悪かったお前が求めているのは私じゃないだろいつまで私を身代わりにすれば気が済むの聞いたこともない猫なで声で私を呼び慣れない手つきで私を抱く帰って来てくれると信じていた、なんて大嘘をつきお前がいないとダメ…

嗚呼あんなに好きだったのに

打ち捨てられた手足を拾い集め何故このような事態になったのかを考えてみる抱きしめた腕は切られてしまい押しつけたキスはもぎ取られてしまった朝から何も食べていなかったのに出る時は出るものなのね嗚呼あんなに好きだったのに拒絶される虚しさが一番堪える…